出力10kW以上の産業用 土地付き太陽光発電の場合、
国による20年間の固定買取価格保証が魅力的ですが、
問題はその20年間が終了した後の出口戦略ですね。
今回は、事業を継続する場合に、どの程度の収益が見込めるのか、
を考察してみました。
目次
●FIT買取単価の目標価格
記事:太陽光発電におけるFIT制度と買取単価は今後どうなる?
でも記載しましたが、経産省が定める目標価格は
2030年で7円/kWh
です。
この価格は、すでに
日本の主力な発電方法である
火力発電の原価を下回っており、
ここまでくると、
もはやFIT制度で固定単価保証しなくても
これ以上下がることはない価格ではないかと思われます。
あるいは、この段階では、FIT制度による新規申請は、
なくなっているかもしれませんね。
したがって、
2012年にFIT制度が始まってから20年後の
2032年以降は、
事業を継続するとしても
7円(+消費税)でしか買ってもらえない、
と考えるのが妥当です。
●20年後 買取単価7円でシミュレーションしてみたら
そこで、20年後、
買取単価を7円+消費税の7.56円として
太陽光発電の収益
がどうなるかシミュレーションしてみました。
消費税はとりあえず8%として
算出しています。
比較として、
2015年度当時に事業を始めた場合と、
2018年度に事業を始めた場合とで比較してみます。
ちなみに、
2015年度の買取単価は27円+消費税=29.16円
2018年度の買取単価は18円+消費税=19.44円
です。今回は、
2015年度は当時、広島県での実際の事例、
2018年度については私が現在経産省へ申請中の物件
を事例として使ってみました。
事業開始時
まず、事業開始時の収益状況です。
運用経費については同じ軽費で比較するために、
標準的な数値である
メンテナンスと保険代=年間20万円
を使用しました。
また、固定資産税・消極資産税等も、
比較を単純化するために、
事業開始時の減額措置は適用せず、一律1.4%の税率で計算しています。
年間売電額/投資額で算出する表面利回りについては
2015年度投資物件 11.9%
2018年度投資物件 10.08%
また、年間売電額から運用経費・税金を差し引いた
実質所得である年間キャッシュフローについては
2015年度投資物件 8.95% キャッシュフロー額 1,279,386円
2018年度投資物件 7.48% キャッシュフロー額 1,399,577円
となっており、
売電単価の高い2015年度のほうが
利回りとしては上回っていることがわかります。
ちなみに、それぞれの主な設備である、
太陽光パネルとパワコンは以下のような仕様・価格です。
この設備の違いについては、後に説明いたします。
20年後(FIT保証期間終了後)
次に、FIT保証期間終了後、
買取単価が7円+消費税の7.56円にまで下がった場合の収益です。
発電量は、パネルの劣化を考慮して
設置時よりも15%ダウンで計算しています。
キャッシュフロー額は
2015年度投資物件 144,931円
2018年度投資物件 381,689円
これは、そもそもの発電量が
2015年度投資物件:49,498kWh
2018年度投資物件:82,450kWh
と大きく異なることが反映されています。
あるいは
2015年度投資物件はFIT保証期間29.16円 が7.56円ですので、約75%価格ダウン
2018年度投資物件はFIT保証期間19.44円 が7.56円ですので、約60%価格ダウン
とダウン率の違いが反映されていると言ってもよいでしょう。
これで事業を継続する意味があるでしょうか?
●事業継続のためパワコンへ再投資する
パワコンは通常15年程度が保証期間
太陽光パネルは25年が出力保証期間
というのが一般的です。
ですので、
パワコンは発電開始後15年前後で交換することが
事業開始時の計画となりますが、
20年間壊れずに稼働している、という実例もあります。
いずれにしても、
事業継続するならばパワコンは交換必要ですので、
これを2018年度の価格で交換したとしましょう。
投資額とそれを年間キャッシュフローで割り込んで、
回収期間を算出しました。
2015年度投資物件 パワコン20万円×8台=160万円 投資回収期間11.03年
2018年度投資物件 パワコン20万円×9台=180万円 投資回収期間 4.72年
2015年度物件が10年経過しても投資回収できないのに対し、
2018年度は5年以内で回収できています。
パネルの寿命を考えれば、事業延長は10年までが妥当と思います。
これ以上延長するならば、パネルも交換が必要ですので。
したがって、10年継続を考慮した場合、
2018年度投資物件は事業継続の意味はあるが、
2015年度投資物件は事業継続する意味はない、
と判断できます。
●2015年度投資物件と2018年度投資物件との大きな違いは?
この2つの投資物件の大きな違いとしては、次の通りです
・パネルの効率が違う
パネルの1枚あたりの出力は
2015年度 255W
2018年度 320W
とわずか3年でパネルの出力は25%もアップしました。
・過積載率が違う
過積載率(パネル出力÷パワコン容量)は
2015年度投資物件 125%
2018年度投資物件 186%
と大きく異なります。
2015年度の段階では、
まだ過積載は普及していなかったようです。
過積載率の高い2018年度は、
その分パネルの枚数も多いですので、
土地への投資代もほぼその分高くなっていますが、
投資回収がとっくに終わっている20年後では考える必要はないですね。
このように、2015年→2018年の3年間で、
パネルの効率、過積載技術の普及により発電量は大きくアップし、
それが20年後に単価が7円にまで下がっても事業継続の可否を分けたものと考えます。
●新技術による更なる期待も・・・
ここまでは既存技術でのシミュレーションでしたが、
20年後には新技術によって、もっと事業継続の可能性が広がっているかもしれません。
例えば、
太陽光発電のデメリットは昼間に発電量が偏ってしまうことにありますが、
これをバッテリー充電によって補おうという開発が進んでいます。
過積載は、
昼間の発電量ピーク時には
太陽光パネルの発電量がパワコンの出力容量を超えてしまうため、
せっかく発電した電気を捨てています。
しかし、これを捨てずにバッテリーに蓄電してしまい、
夜間に電力供給しようという試みです。
20年後となると、バッテリーの価格も普及価格となり、
こういった技術も実用化されているんでは、と期待できます。
この場合も、過積載率の高い物件のほうが有利だと言えますね。
●まとめ
FIT制度による20年の買取保証期間が過ぎた場合の、事業継続の可否を考察してきました。
20年後、買取価格がどうなっているかまだ確定はしませんが、
10円以下に下がっていることは間違いないと思われます。
いずれにしても、事業継続のためには、
FIT制度スタート時の40円といった高価格で収益を確保してきた物件よりも、
価格が下がった現状でも収益を確保できるように
最新技術を使っている物件のほうが、有利といえるでしょう。
これは、価格が20円を切った
2018年度に土地付き太陽光発電への投資を決めた私の持論でもあります。
みなさんの投資判断の参考になれば幸いです。