土地付き太陽光発電のデメリットを知ったうえで、購入や運用の検討をしてみましょう。
ここでは、デメリットについて、まとめてみました。
目次
●土地付き太陽光発電のメリット
出力10kW以上の土地付き太陽光発電は、
・FIT制度(国による固定単価買取制度)による20年間の安定売電収入
・手間が少なく、安定した経費運営
が大きなメリットです。
→参考記事:土地付き太陽光発電の投資メリット 圧倒的な長期安定収入
●土地付き太陽光発電のデメリット
一方、デメリットとしてはどのようなものがあるか、以下の通りあげてみました。
・発電量が天候の影響を受ける
・自然災害により設備が破損するリスクがある
・設備の故障リスクがある
・電力会社による出力抑制の可能性がある
・FIT制度終了後の出口戦略について不透明である
これらについて1つ1つ、その内容と対策について、以下に説明いたします。
1.発電量が天候の影響を受ける
これは、太陽光発電としての原理的なことですので、
完全に避けることはできないものです。
夏場と冬場では日照時間が異なり、
同じ季節でも、晴れの日と雨の日とでは
発電量が異なるのも当然と言えるでしょう。
ただ、完全に避けることはできないにしても、
できるだけ天候による影響が少なくなるよう、
以下の対策が講じられます。
対策その1:設置段階での設計による工夫
①できるだけ日照時間を確保できるように、太陽光パネルモジュールを設置する
理想的な太陽光パネル受光面の設置方向と角度は、
真南方向
地面に対する傾斜角度が30度
と言われています。
ただし、設置方向と傾斜角度を決めるときは、
影の問題に留意する必要があります。
パネルを真南に向けて30度で設置したときには、当然、
そのパネルの裏には影ができます。
その影に、後ろ側に設置したパネルが入ってしまうと、
発電量が低下してしまうわけです。
そのためには、後ろ側に設置するパネルは
その前のパネルと必要な間隔を確保する必要があり、
そのためには十分土地の広さを確保する必要があるわけです。
あるいは、傾斜角度を少し下げることを検討する方法もあります。
傾斜角度を10度下げるとは発電量は約2%下がると言われていますが、
後ろのパネルが影になるデメリットを考えれば
許容できるかもしれません。
また、傾斜角度を下げた場合のメリットとしては、
土地が狭くてすむほかに、耐風力のアップがあります。
すなわち、パネルを取り付ける架台設計が安くつく
可能性があるとともに、台風など自然災害に強くなる、
ということが挙げられます。
土地の広さや架台の強度確保は、
投資金額とトレードオフの関係があります。
収益確保のためのトータル設計が必要となります。
ちなみに、
下記の自然災害によるリスク対策の項で書いているように、
経産省による災害対策強化の設置基準としては
パネルの設置傾斜角度は20度が標準とされています。
②設置する土地も周辺に太陽光遮蔽物がない土地を選ぶ
理想的なのは、周辺に何もない平地を確保することですが、
これも一般的には土地の価格が高くなることとなります。
したがって、
山間のうまく日照時間が年中確保できるような地形
をうまく選定する必要があります。
場合によっては、山林の一部を伐採する必要性が出てくるかもしれません。
③ピーク日照強度の影響を少なくする設計・・・過積載の採用
近年、太陽光の発電量は過積載という方法を取ることにより、
増加してきました。
この過積載による発電量アップと設備の単価ダウンにより、
FIT精度による買取単価が年々下がっても、投資利回りが
確保されてきたのです。
過積載とは、簡単にいうと、
太陽光パネルの出力>パワコンの容量
となるように、設計することで、
太陽光の強度がピーク時には
パワコンで発電量は抑制されるけれども、
太陽光が弱いときは、
大出力のパネルにより発電量を確保し、
総合的に発電量を確保するものです。
太陽光発電の基本構成は、上記のように
太陽光パネル(モジュール)で発電された電気は直流ですので、
これをパワコンで交流に変換してから
電力会社の電力系統に接続する必要があります。
この太陽光パネル(モジュール)とパワコンの2つが
太陽光発電の重要な基本構成設備なのですが、
従来は、太陽光パネルの出力=パワコンの容量(処理能力)
となるように、システム設計されていました。
パワコン容量とよりも太陽光パネルの出力が大きい場合、
太陽光パネルで発電した出力電力を
全てパワコンで処理できず
捨ててしまうからです(下記グラフ赤色矢印の部分)。
しかし、近年、太陽光パネルの単価が下落してこともあって、
過積載でパネルで発電した電力を捨てるとしても
総合的には、発電量を大きく確保できる
ことがメリットとして取り上げらるようになりました。
過積載では、
従来に比較すると太陽光が弱くなる季節や天候の場合でも、
発電量の変動も低減できることもメリットなのです。
対策その2:運用時の工夫
定期メンテナンスとして
草刈り
パネル面の洗浄
その他周辺土地の遮蔽物の撤去
など、太陽光が遮られないように日々の
メンテナンスが重要となります。
2.自然災害によるリスク
地震、台風、水害など、
自然災害によって設備が破損したり、
土地が水没したり、といったことが考えられます。
対策
①施工場所を選定する
当然ですが、災害の発生しやすい土地を選ばないことです。
・海辺の海抜ゼロメーターに近い土地
・山の斜面を切り開いた土地
・河川の近く
など、自然災害の発生しやすいところは
避けるのが無難でしょう。
②施工方法の基準を守る
国による施工基準を守って設置することが
まず重要ではありますが、
近年の大規模化した台風等を考慮して、
経済産業省ではさらなる安全確保
に向けた取り組み検討を実施中です。
ちなみに、経産省は2017年3月21日の報告資料で、
安全基準強化のため、
以下のようにパネルモジュールの設置標準仕様の考え方を
明確にしました。
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出展:経産省(2017年3月21日)
③損害保険に入る
上記の①②のように
災害を未然に防ぐことが一番の対策ですが、
もしものリスクを考慮して
損害保険に入ることも対策となります。
3.設備の故障リスク
パワコンの故障、パネルの故障、その他ケーブル遮断など
設備の故障のリスクはゼロではありません。
ただし、太陽光発電は、モーター・発電機など、
機械的な機構の設備が存在しないため、
その故障リスクは、
他の発電設備に比較して小さい
といえるでしょう。
対策
①保証のある設備を選ぶ
メーカー保証のある設備を選定することです。
メーカー保証は、性能保証と製品保証の2通りがあります。
性能保証は、
パネルモジュールの出力性能を保証するもので、
その出力劣化率も含めて20~25年といったところが標準的です。
性能以外の製品の故障としてはパワコンも含めて
10~15年
といったところが標準的です。
②発電量を毎日モニターする
遠隔モニターシステムを取り付けることで、
webにて発電量を毎日モニターすることができます。
故障以外にも、近くの落雷により
ブレーカーが遮断してしまった場合など
不測の不具合の発見にも必要ですね。
4.出力抑制の可能性
電力会社毎に、その地域の電力の需給予測により、
出力抑制を計画する場合があります。
発電した電気は、基本的には貯めることができないため、
電力会社は、需給バランスをとりながら、
日々の発電量を計画的にコントロールしています。
しかしながら、太陽光発電は、昼間に発電量が偏ることから、
電力の供給が需要を上回ることが予測される場合、
電力買取を一部制限することが生じるのです。
対策
①電力抑制のない電力会社管轄地域を選定する
現在、東京電力・中部電力・関西電力管轄の
出力10kW~50Kw未満の太陽光発電は対象外です。
②保険に入る
出力抑制補償保険も存在しますので、
対象電力会社に接続する場合は、保険に入ることが対策となります。
5.FIT制度終了後の出口戦略について
20年間の買取保証期間終了後の出口戦略をどう描くかは、
議論の分かれるところです。
大きく以下の4通りに分かれると考えますが、
いずれにしても、そのときの政策や電力会社の方針により、
臨機応変に考えていく必要があります。
①売電を継続する
この場合は、
売電先をどう確保するか、
いくらで買ってもらえるか
が焦点となります。
②発電事業を手仕舞いする
すでに初期投資回収は10~12年で回収済なのだから、
手仕舞うことによる資金の持ち出しはない、
という考え方です。
売電先の確保が難しい場合や、
売電単価により事業継続メリットがないと判断する場合
この選択となります。
ただし、手仕舞う場合、
設備はどう処分するか
土地はどう処分するか
が検討課題となります。
③中古物件として売却する
今後、買取保証期間の20年を待たずに、中古物件の売買が増えてくるとの予測もあります。
④20年以上買取保証をする業者と提携する
一部の業者で、このようなサービスが始まっています。
①②③④について、は別記事で特集したいと考えています。
①の売電を継続する場合については、
→参考記事:土地付き太陽光発電 FIT制度終了の20年後も事業を継続するべきか?
●まとめ
いろいろなデメリットがありますが、
内容を理解して保険などの対策をしておけば、
リスクは最小限に抑えることができると考えます。
それよりも、
太陽光発電に投資しないことの機会損失
というデメリットのほうが大きいのではないでしょうか。